苦情は何処へ行く?

今から6年ほど前にあった、カップ焼きそば「ペヤング」のゴキブリ混入事件を覚えてますか。当時大学生だった男性がペヤングの麺にゴキブリが入っていることをTwitterに投稿したことに端を発する事件は現在でも考えさせられる点の多い事件でした。

事件の概要は、
・大学生、ペヤングにゴキブリが混入していたことをTwitterに投稿、拡散
→翌日、保健所・製造会社に連絡
→大学生、製造会社の対応に不満を漏らす
→ゴキブリ混入がネットニュースで報じられる
→保健所、ペヤング自主回収を指導
→大学生・製造会社との間で和解が成立
→しかし、ペヤング愛好家たちは大学生の投稿が発端でペヤングが食べられなくなったこと、製造会社に多大な損害を与えたことを理由に大学生を批判
→大学生、ツイートによって騒ぎを大きくしたことを反省
という流れです。

この騒動の最もまずかったところは「然るべき機関に相談する前にネットに投稿した」ところでしょう。確かに、他にも異物の入った焼きそばが出回っているかも知れず、同様の被害を防止したかったという気持ちもあったのでしょうが、結果的に根本の問題が解決される前にパニックを起こしてしまいました。

インターネットの常なのですが、事実より憶測・噂のほうが拡散するスピードが速いのです。大学生は夜の10時にツイートし、翌日の朝8時に保健所に連絡しました。この間10時間にツイートが拡散し、多くの憶測が生まれたことは想像に難くありません。保健所が調査するのにも時間がかかることも考えれば、事実と解決策が判明するまでもっと長い時間このゴキブリ混入事件は憶測にさらされることになります。その中には事実とは異なる情報、感情的な情報も含まれており、それらが膨張することで「炎上」するに至るのです。

事実を調べるには膨大な手間がかかります。この事件の場合、保健所は本当にゴキブリが混入していたのか、混入が事実だったすればどこで混入したのか、他に同様の混入が報告されていないかということを間違いのないように調べる必要があります。ですので、憶測と事実のタイムラグをなくすには前者を遅らせるしかありません。それを具体的に言うと、「安易にネットに投稿するのを踏み留める」ということなのです。

このペヤング事件から6年が経ちます。この間にスマートフォン、インターネットは急速に拡大して誰でも好きなように発言ができる空間が整備されてきました。その一方で保健所・警察・その他行政機関、企業のお問い合わせ窓口へのアクセスの利便性はあまり改善されているように思いません。ネットユーザー側も直接連絡するよりSNSに上げたほうが早いと思っているように見えます。

ただ、行政機関はもとより、企業もSNSを常に見ているところは稀有でしょう。ネットに書いたって何も改善されんのです。見てないのですから。

そのかわり、メールなり電話なり、直接言えばある程度は対応してくれますよ。あっちもプロですから。

もう少しネットで愚痴る前に直接問い合わせる習慣が定着すれば、インターネットはもっとより良くなるんじゃないかなあと思うんです。