セブンイレブン消費税計算の闇(考察編)

この記事は特定の企業の対応を検証するものです。
事実確認には細心の注意を払っていますが、執筆者はただの大学生なので情報収集にも限界があります。
事実と異なる箇所、誤解を招く表現があればご一報ください。
可能であれば修正、致命的な欠陥があれば非公開にして謝罪します。

前回のまとめ

この記事は前回の「セブンイレブン消費税計算の怪(事実整理編)」の続編です。まだ見てない方はそちらからご覧ください。

前回の内容を時系列順に並べると、
①2004年、国は消費者が支払うべき総額がわかりやすいように消費税を含めた総額表示を義務付ける制度を実施した。
②①の施策に関連して、会計時に税抜の総額から消費税を計算することを認めた特例を廃止した。
③しかし、事業者によってはレジのシステム更新に時間がかかるため、2023年9月末まで②の特例を利用してもよいという猶予期間を設けた。
④2019年9月、セブンイレブンは軽減税率の導入を理由にレジの消費税計算方式を従来の商品ベースから総額ベースに変更(②の特例を利用)した。
⑤しかしながら、③のように2023年9月末までにセブンイレブンは総額ベースの計算方式をやめなくてはならない。

 前回は一見不合理に見えるセブンの対応に疑問を投げかけて終わった。今回はセブンがこのような対応をした理由を考察する。ここからは大いに個人の主観的な部分が含まれるので鵜呑みにしないよう注意をお願いする。

小銭を稼ぐため?

 最初に思い浮かぶのは「通常よりも多く取って売上を上げるため」という説である。特にコンビニのような24時間営業の小売店では1取引あたり1円も馬鹿にできない。業界最大手のセブンなら1日に何百万もの取引が行われているのも用に想像がつく。

 しかし、消費税は事業者が納入する税金である。店舗売上から一定割合を消費税として納めなくてはならない。消費税として客から取った分をすべて国や地方に納入すれば、得られる利益は0なのでは?と思うかもしれない。

 実のところ、事業者は客から消費税として得た分をそのまま納税するという方式をとっていない。事業者の年間総売上から消費税を計算するという方式をとっている。例を上げて見ていこう。

 例えば、税抜93円、消費税率8%の商品を購入する取引が3億回行われたとする。
商品単価から消費税を計算すると税込100円である。
この方式での売上は、
100×3億=300億(円)で、
売上から国や地方に納める消費税分を引くと
300億×100/108≒277.78億(円)となる。

 次に、税抜93円の商品が3つ購入された取引が1億回あり、各会計時の総額に8%の税率が適用されたパターンを考える。
この方式において、一回の取引における売上は、
93×3×1.08=301(円)で、これが1億回行われたから、
301×1億=301億(円)が総売上だ。
総売上から国や地方に納める消費税分を引くと、
301万×100/108≒278.7億(円)

 やはり、計算方式で差額が出てくるようである。また、取引回数が増えれば増えるほど得られる利益は大きいようだ。

将来のイメージアップ宣伝?

 軽減税率導入時に起きたセブンの301円問題は日刊ゲンダイITmediaなどが報じていたが、私の目で確認する限り、国の特例を利用したということまでは踏み込んでいなかった。つまり、一般の人々に301円問題の本質は知られていないということだ。

 2023年10月までにセブンは総額ベースの消費税計算方式を商品単価ベースに戻す必要がある。私はこの2023年秋頃にセブンは「新計算方式で少しお得になった」と広告するのではないかと考える。
 3年という年月が経過すれば301円問題の記憶は風化されているだろうし、新計算方式で消費者が得をする可能性があるというのは事実である。これを宣伝すれば企業のイメージアップが図ることができる。

 しかし、これまで検証してきたように301円問題の本質は本来国が特例の対象に想定していない事業者が、特例を利用したことにある。これを利用して企業のイメージアップを図ることは、以前から指摘されている上げ底や内容量を減らしただけの商品リニューアルと類似したものを感じる。

 業界最大手の大企業が3年後、私の予言通りに宣伝しないことを切に願うとともに、この記事の読者が3年後も301円問題の本質を覚えていていただけたら幸いである。