文系学部生のための良い先生との出会い方

 例の感染症も一部の国でワクチン接種が開始されるなど収束の兆しを見せ、大学での対面授業も再開の兆しが見えてきているように思います。そこで今回はぼくの大学での経験から、大学1・2年生向けに恩師となるようなよい先生と出会える方法を伝授したいと思います。

 大学の教員の仕事は大きく分けて2つあります。それが「研究」と「教育」です。ただ、残念なことにどちらかが疎かになっている教員も少なからず存在します。特に後者の「教育」が疎かになってしまうと我々学生は高い学費を払って無駄な時間を過ごすことになります。
 ぼくが出会ったそんな残念な教員を挙げると、

・事前の予告なく期限が短いレポート課題を出す教員
シラバスに載ってない、生協にも発注していない本を課題図書にする教員
・グラフの出典欄に自分のパソコンのハードディスクを参照する教員
・話を何度も脱線し、現実の社会問題について愚痴を垂れる教員
・自分の考えとは異なるコメントを無視し、同じような考えのコメントしかフィードバックしない教員
・「テストの成績が悪い」と学内掲示板ではなく、わざわざツイッターで発言する教員

 皆さんにはこのような教員の授業を受けてしまって不快な思いをしないよう、気をつけるべき点がいくつかありますので、紹介したいと思います。

①学生同士のネットワーク網を持っておく

 大学生の基本です。友人・先輩などから「この先生の授業がいい・悪い」という情報を仕入れておくとかなり参考になります。ぼくは自分がいる大学のことしか体験してませんので、身の回りの同級生・先輩の情報は何より正確なはずです。同じ授業を受ける者同士でもいいので友人は作っておいたほうが損はないです。

②楽単は取ってはいけない

 その学生同士の情報から「〇〇って授業は楽に単位取れるよ」という情報があるかもしれませんが、1・2年生の間は取らないほうがいいと思います。
 というのも、楽単の授業にはあまり真面目に勉強しない、授業をまともに受ける気がない学生が殺到するため、授業風景はたいへん見苦しいものになります。また、初めのうちから楽な単位を取って勉強する癖がついていないと、卒業間際に取れそうな単位がないと焦ります。楽単はちゃんと勉強したけど単位が足りないときのための保険として取っておくのが吉です。
 逆に、評価が厳しい先生こそ、それについてこようとする学生には優しく手を差し伸べてくれるものです。楽に単位を取ろうなどと最初から考えないことです。

③バラエティ・ワイドショーに出る教員は避ける

 うちの大学にはあまりいないのですが、娯楽色の強い番組に出れる教員は普段から暇=研究を真面目にやっていない可能性が高いです。また、テレビに出演するために授業を欠席して、学生にはレポート作成や試験をさせるだけということもやります。学生にとってはあまり勉強になりません。
 逆に、報道番組や新聞にコメントだけする教員は信用性が高いです。マスコミから一定の信頼を得ていて、かつ大学での仕事に専念できているということですから。

④学外の政治活動に参加している教員は避ける

 このタイプの教員は社会学の教員に多く、授業中、しょっちゅう脱線して政治の愚痴を延々と聞かせてくるのが特徴です。どうも同じような考えを持つ人達としか接していないのか、度々SNSでズレた発言をして炎上する場面を見かけます。自分の思ってる結論が正しいと思っており、それに反する事実や意見にはかなり冷たい教員には要注意です。少なくとも、学生と意見が異なっていても寛容な態度で接する教員を選んでください。
 「科学的」で「学問」と呼べるものは実験や観察から考察して結論を導くものですが、結論のために考察していては元も子もありません。この点は経済学などの分野から社会学に対して批判されているところでもあります。自分の柔軟な思考のためにも、なるべく多角的な意見を紹介できる教員のもとで学びましょう。
 逆に、政府や政治家などに実務として提言を行う仕事をやっている教員はかなり信用度が高いです。プロ中のプロですからついていって損はないと思います。
 授業を受ける前に教員の名前で検索し、学外でどのような活動を行っているのか調べておくのが吉でしょう。

 個人的な体感で言うと、この傾向が強い教員ほど授業のアナウンスが雑だったり、課題の出し方もかなり適当だった印象があります(最初に挙げた教員の例の殆どが政治運動に参加していたり、そのような教員と密接な関係にあったりしていた)。

 以上、4点がぼくからのアドバイスになります。最後にぼくが大学生活で印象に残った先生の発言を2つ紹介して終わりにします。

「『やってみなくちゃわからない』は言ってはいけない
 厚生労働省で新薬の認可を行う部署から来た外部講師の方のお言葉です。
 新薬開発は億単位という莫大な資金と10年以上の長い時間をかけて行われます。そのため、開発に携わる製薬会社や医師から「早く治験を行う許可を下ろせ」「やってみなくちゃわからないだろう」と圧力がかかるそうです。しかし、厚労省は国民の命がかかってる故にそんな安直な提案を突っぱねています。
 新薬認可の業務に対する尊敬とともに、一見、勇気の一言に見える「やってみなくちゃわからない」が実はとんでもなく恐ろしい決断を迫る言葉だということを気付かされました。

「専門家の意見なんて当てにならないですよ。誰もトランプ当選やブレグジット(英国EU離脱)を予想してなかったんだから」
 最も尊敬する先生の言葉です。先生は政治学が専門で、本を書かれたり、報道番組や新聞にコメントを送ったりと活動している立場でありながら、このような発言ができるあたり、謙虚だと感じさせます。
 実際、2016年のアメリカ大統領選挙では誰しもが「トランプ当選はありえない」と予想したものの(木村太郎はトランプの勝利を予想していた)、トランプが当選。2020年の大統領選挙でもあらゆる世論調査がバイデンの圧勝を予想していましたが、結果は何日間も勝者が決まらない拮抗状態からのバイデンの辛勝でした。
 最近の専門家たちの予想を裏切る社会の動きは、社会というものがいかに複雑で予想困難なものか、専門家という権威がいかに空虚なものかということを示唆しています。その言葉を専門家である先生の口から聞けたことは実にいい経験だったと思います。

それでは、皆さんによき出会いがありますように……。